図書室あと地

褪せた灰桃色のカーペット。

ワタヌキが来る

四月一日。昔むかし、冬に着ていた着物から綿を抜く日だったから、わたぬきという読み方があるらしい。

来る春にあわせて立場や姿を変える日。そんな役回りを持たされているのは、今でも同じだ。

 

3月31日。

現部署の人間が持つ鍵を返した。営業で使う車を受け取った。

今日までの私が去っていく。ひっそりしていた次の私の影が濃くなる。新しい私だなんて名乗ってくれるな。ただ、上を向くサイコロの面が変わったくらいで。

変わる感覚はあまりない。明日だって今日の続きだ。一番変わったのは「部署異動です」の言葉を聞いたあの日。私の中で大切なひと幕が終わったのは、確かにあの瞬間だった。

 

これから来ることについて、覚悟は別に決めていない。ただ悪い想定を考えに入れている。これから起きるであろうこと。クレームが入る、叱られる、担当を変えられないかと言われる。怖がっていても進めないから、あるものと思っておく。避けることは、多分できない。円滑に回る工夫はするけれど、それでもできないことは諦めたほうがいい。だからだろうか、ビジネスパートナーやお客様の怒った顔を想像しても怖いと思えない。落ち込む自分が想像できない。今だけかもしれないけれど。

 

変化をやめない。私のここ数年のポリシーだ。それが後退だろうが構わない、とにかく違うところへ、前とおぼしき方向へ。

幸いなことに、それが叶う環境をもらっている。気がつけば3年連続ルーキーでいることになる。

予期している以上の変化を起こせることを楽しみにしたい。人間になる目標はもういらないかもしれないけれど、変わりたい目あてをいつまでも見ていたい。

 

目標:

「スマートで 目端がきいて几帳面 負けじ魂 これぞ船乗り」

受け売りばかりで嫌になるけれど。

この文句が自分のものになるように、挑んでみたい。