図書室あと地

褪せた灰桃色のカーペット。

他人に優しいあんたにこの心がわかるものか

だって近くにいたって誰もちゃんと見てはくれず

手を伸ばし抱き止めた激しい光の束

そんな器用に ああ 生きられない

 

だから私は普通に生きることを諦めた

 

 

いつか今の会社を辞めて転職するんだと思っていた

3年目の異動があって1年 この1年がもし普通に過ぎてくれていたら 思い描いた路線はきっと変わっていなかったんじゃないか と思う

 

 

春、歌を辞めた

夏、車の中でヨルシカの思想犯ばかりきいた

角を曲がった秋、スカートを切られた月曜日の朝、弦楽器の音は悲鳴に似ている

起きて戦えと誰かが言った

冬、退勤後に歌って帰った夜明けの孤独

 

 

心が蘇生して気がついたとき、仕事以外の余白に何もなかった

なんとなく欲しかった普通の幸せに、手を伸ばすことも怠く

ヨルシカの歌をききながら映画館の街を歩いた

ひとつだけ観たい映画を決めて

 

残りわずかな座席で前側のチケットを買って

ひとりの女の子が壊れる映像を受け取りながら、呼吸をすると背中が痛かったのをちゃんと覚えている

わかるな、という感覚は錯覚かもしれないけれど、そこが曲がり角だったのは間違いない

映画終わりに食欲を失いながら食べたハンバーガーがまた、おいしかった

 

結局同じ映画を3回観た

予告で観た映像と台詞と歌が気になって、別の映画も観に通った

平日は会社、休日は映画館

そんな生活をしているうちに、少しずつ腹が決まっていた ように思う

 

人生の何かを諦めていなければこんな決断はしない

普通に生きて、なんとなくの希望に向かってそれなりにエネルギーを使って、普通の範疇にある小さな幸せを叶えていく

そういうことができない だから諦めた

もし目指し続けていたら、何もできないまま時間とともに枯れて死ぬような気がした

 

こんな日々も何かになったらいいね

もし何にもならなくても、ずっとぼーっとしているよりはマシだと信じている